大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和35(オ)1260 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理 由

上告代理人荒谷昇の上告理由第一点について。

所論は、被上告人の本件賃貸借解約申入の正当事由の有無に関する原審の判断に

は理由そごの違法があり、さらには借家法一条ノ二の規定の解釈適用を誤つた違法

があるという。しかし原判決の引用する第一審判決は、挙示の証拠に基づき、上告

人A水産株式会社が、本件家屋の競落人たる被上告人のため金沢地方裁判所から本

件家屋の一部につき引渡命令を受けた訴外D食肉加工株式会社外七名と共謀の上、

同上告人自身が引渡命令を受けていないのを奇貨として、右会社外七名との間に昭

和三二年四月二五日転貸借解除並びに営業経営委任契約公正証書を作成し、従来同

上告人と右八名との間には転貸借関係は勿論営業経営委託の事実も全く存したこと

がないのに、あたかも両者間で転貸借を合意解除して同上告人の営業経営委任を受

けたものの如く仮装せしめて、右引渡命令の執行を妨害して事実上これを不可能な

らしめようとしたこと、同上告人は昭和三二年九月一九日被上告人に対して賃借権

確認の訴を提起しながら、昭和三四年一〇月一九日に至るまで賃料の支払をなさず、

右同日に至つて漸く未払賃料の一部を供託したことならびに同上告人が昭和三一年

頃から休業状態であることを認定し、右認定事実を綜合して、同上告人の右所為が

賃貸人たる被上告人に対する関係で著しく信義に反するものであり、右事実を綜合

すれば本件賃貸借解約申入の正当事由たるを失わないとしている趣旨が窺われるの

であつて、同上告人は前記転貸借解除並びに営業経営委任契約公正証書を作成した

昭和三二年四月二五日には被上告人が本件家屋の競落取得者たることを知つていた

ことが判文上明らかに窺われ、その後も、判示のような被上告人に対する賃料不払

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の事実が存する以上、その他原審認定の前記諸事情をあわせ考えれば、所論正当事

由の有無に関する原審の判断は、結局において正当に帰する。

なお所論は、訴外Eが上告人A水産株式会社に対して賃貸中の本件家屋をさらに

訴外F協同組合に賃貸することは不可能であるというが、訴外Eが同上告人に対す

る関係で債務不履行等の責任を問われることの有無は別として、同一物件を二重に

賃貸することも不可能ではない。また、所論は、原判決が同上告人に対して引渡命

令が発せられていないと認定したのは、証拠に基づかない違法を犯したものという

が、同上告人に対して引渡命令が発せられたことを認めるべき証拠は記録上存しな

いのみならず、仮にこれが発せられた事実があつたとしても、同上告人が訴外D食

肉加工株式会社に対する前記引渡命令の執行を妨害したことが被上告人に対する関

係で信義則に違反するとした原審の判断になんら影響するものではない。

その他所論は、独自の見解に基づき原審の事実認定判断を非難するに過ぎない。

以上所論はすべて採るを得ない。

同第二点について。

所論は、被上告人が上告人A水産株式会社との間の本件家屋賃貸借期間満了の日

である昭和三三年一一月一五日以前になした解約申入は無効であるのに、これを右

期間の経過によつて効力を生ずるとした原判決には借家法三条の解釈適用を誤つた

違法があるという。被上告人が昭和三三年一〇月八日本件反訴状陳述を以てなした

解約申入は、期間の定めのある本件賃貸借の期間満了の日である同年一一月一五日

以前になされたものであるから、右賃貸借の解約申入としてはその効力のないこと

が明らかであり、また借家法二条による更新拒絶の意思表示は賃貸借期間満了前六

月ないし一年内になされなければならないところ、右解約申入は右法定期間内にな

されていないのであるから、更新拒絶の意思表示としての効力をも有しないものと

いわなければならない。従つて本件賃貸借は昭和三三年一一月一五日の経過と共に

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更新されてその後は期間の定めのない賃貸借となつたものというべきところ、被上

告人は右賃貸借更新に際しても又その後も引き続いて本件反訴状による解約申入の

主張を維持し、かつ右上告人よりの賃借権確認の訴に対して賃借権が消滅した旨を

主張してこれを争つていることが明らかであり、しかしてその頃解約申入の正当事

由が存在していたことは、前記第一点に対する判断に説示したとおりである。従つ

て、その後六月の期間の経過により本件賃貸借は終了し、原審口頭弁論終結当時既

に同上告人は本件家屋を明渡すべき義務を負つていたものといわなければならない

から、これと結論を同じくする原判決の判断は相当である。それ故所論は採るを得

ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、

主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

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